若手おいさんの日記

よく食べ、よく飲み、マイペースで生きましょう。

210102_GRを買い替えた話

 今回は私のカメラに関するお話である。長文になるので、お時間の許す方はお付き合い願いたい。

【1】GR IIを購入

 2018年8月、私はあるカメラを購入した。RICOHGR IIである。ご存知の方も多いだろう。いわゆるコンパクトデジタルカメラなのにAPS-Cサイズのセンサを積んでいて、レンズは28mm単焦点の一本勝負、手ブレ補正も備わっていないという男気溢れる仕様でありながら、そのパフォーマンスの高さとシンプルゆえの奥深さのために、プロのカメラマンをしてその魅力の虜にしてしまうような、ニッチで強いカメラである。

 GRシリーズの存在自体は何年も前から知っていて、機能美を体現した無骨な外観や、決して流行に迎合しないプロダクトコンセプトに惹かれていた。しかし、私が主に撮るのは現役の鉄道車両であるため、GRは機能と価格の両面でハードルが高く、個人的には実用性に乏しいと判断して購入する気にはならなかった。

 ところが、時が経てば事情も変わるもので、2018年当時の私は結婚してから間もなく、妻と共に過ごす時間が増えるにつれ、自分の視野に近いアングルで写真を撮りたい場面も増え、表現力に優れた広角レンズを求めるようになった。ちょうどその時分、生意気にも海外行きの新婚旅行を間近に控えており、せっかくの想い出をできるだけ美しく残したい、それもできるだけ軽装の気取らないスタイルで、と考えていた。そうした理想を実現してくれる道具として真っ先に思い浮かんだのがGR IIであった。

 PENTAXお家芸であるコンパクトな広角レンズを買い足してK20Dを使い続けるという案も検討したものの、さすがにイメージセンサーの性能が時代に見合わなくなっていたし、何より日常使いするには少しやる気が必要であることを考慮した結果、税込59,800円のGR IIを購入することに決めた。高性能な広角単焦点レンズに加え、新しいカメラ本体が手に入ると考えれば合理的な買い物だった。

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▲ハネムーン往路の機内から眺めた北米大陸の嶺々。

RICOH GR II

F9.0 1/500 ISO-100

 近所の散歩にも何の抵抗も無く持っていけるそのコンパクトさとパフォーマンスの高さがすっかり気に入り、仕事以外の外出ではいつも携えていた。撮りたいものに出くわしたら、電源ボタンを押してシャッターを切るだけ。機能がシンプルだから、撮影の際にあれこれ考える暇を人に与えず、視界に入った素晴らしい光陰を瞬時に捉えることのみに集中できる。多すぎる選択肢はかえって足枷になり得ることを教えてくれた。

【2】修理依頼

 すっかり気に入っていたGRIIだったが、いつものように撮影に出かけた先月のとある週末、帰宅後に写真を現像していると、何やら黒い影が写り込んでいるのを見つけてしまった。もしや、と嫌な予感がした。

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 ▲写真右上、青空の濃度が切り替わる辺りに方にボヤけた黒点が見える。

F6.3 1/500 ISO-100

 レンズを確かめても異常は認められないことから、きっとカメラ内部のイメージセンサーにホコリや汚れが付着しているのだろうと見当をつけた。

 一眼レフのようにミラーアップができるわけではないので、自力で取り除くことは難しい。幸い、ビックカメラの5年長期保証に加入していたので、早速最寄りの店舗に持ち込み、修理の手続きをとった。このときに留意事項として次の2点を伝えられたが、いずれも承知の返事をしてGR IIを預けることにした。

・保証の範囲内(無償)で修理ができるか否かは現時点で不明

・無償で修理できると判断された場合は連絡無しでそのまま作業に入り、修理完了品を返す時点で連絡をする

【3】修理不可で、そして返却

 2週間ほど経った頃、ビックカメラから連絡があった。イメージセンサの清掃だけなら大したことは無いだろう、と高をくくっていたのだが、残念ながら先方の回答は私の期待に沿うものではなかった。

・メーカーが見積もった修理金額が購入金額の80%を超過しているため修理不可

・その代わり、購入金額(59,800円)の範囲内で新しいカメラをビックカメラの店舗で買うことができる

・差額を支払えば上記金額を上回る商品も購入可

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▲見積書の抜粋(税抜)。80%のボーダーを下回るまであと300円足らずだった・・・。

 RICOH発行の見積書によると、自覚していたイメージセンサーへのホコリ付着の他、ピントの不具合も認められたそうで、これらの問題を全て解消するにはレンズ機構を丸ごと交換しなければならない、と結論づけられていた。修理金額が高価になってしまったのも頷ける。

 ホコリの付着は絞り開放で撮影してもその存在がわかるほどだったため、断腸の思いではあるが、GR IIを引き続き使うことは諦めることにした。ハネムーンにも連れて行った想い出のカメラだったが、やむを得ない。

【4】代替品の検討

 そういうわけで、新たなGRIIを求めて早速ビックカメラ各店舗の在庫を確かめたのだが、さすがに後継機種の登場から1年半以上が経過しているとあって、すでにどこも品切れ状態。

 困ったことになった。同じGR IIであれば購入当時よりも価格は下がっているはずだから、代替品の購入にかかる手出しはゼロないし小さな金額で済むと踏んでいたのだが、その在庫が無いことが判明したため、私が取り得る選択肢は必然的に「GR IIIを買う」に絞られてしまったからだ。(「何も買わず我慢する」という選択肢を無視していることに触れては不粋でいけない)

 ビックカメラ店頭で10万円は下らない品だから、59,800円の下駄があるとしても、少なくとも4万円超の身銭を切らなければならない。我が家の大蔵大臣の理解と決裁を得るには程遠い金額であった。背水の陣である。

 幸いなことに代替品の購入期限は設定されていなかったため、年末年始のセールで値下がりする可能性も考えて、しばらく落ち着いて考えてみることにした。

【5】売却という名案

 量販店から修理不可の烙印を押されてしまったGR IIだが、不可逆的かつ致命的な不具合が発生しているわけではない。つまり、たとえメーカーでなくとも一定の技術を持つ人間であれば修復することができるのではないか、もしそうだとすれば中古買取り品としての需要が見込めるのではないかと考え、ネットで見つけた中古カメラ販売大手に査定を申し込んでみた。

 すると驚いたことに、約35,000円(!)もの高値で買い取っていただけるとの返事があった。こうして私は、保証の59,800円と合わせて約95,000円の軍資金を得たのである。結果、僅か9,000円ほどの手出しでGR IIIに手が届くわけである。窮地に立たされた私にも、少し遅めのクリスマスプレゼントがやって来たに違いないと歓喜した。

【6】GR IIIを購入

 GR IIの買取金額が無事口座に振り込まれたのを確認し、私は大晦日特有のおかしなテンションにまかせて意気揚々と店舗に向かい、値段の割に軽々とした紙袋を抱えて帰宅した。早速、年越しの風景を撮るために活躍してもらった。

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▲記念すべき初カットは我が家の年越し恒例「おでん」

RICOH GR III

F2.8 1/8 ISO-100

 先代と比べて起動速度は体感でわかるくらいに速くなり、背面液晶はタッチパネルになったことでピント合わせが楽になった。レンズ構成が改められたことでマクロモードにせずとも被写体に寄れるようになったし、センサーの性能も向上、待望の手ブレ補正機構だって搭載された。何より私にとって嬉しいのは、ダストリムーバル機能が搭載されたことだ。これにより悪夢が繰り返されることは無い・・・と信じている。

おわりに

 以上、私とGRの出会いから今日までを長々と書き連ねてきたが、先代のGR IIは間違いなく私の生活を豊かにしてくれた。最近になってバケペンを使い始めた私が言うと矛盾にしか聞こえないだろうが、GRシリーズは、美しく写るカメラをコンパクトに持ち運べるという価値を提供してくれる素晴らしい製品である。

 一連の騒動は、GRのそんな魅力を改めて感じるきっかけとなった。皆さんにもぜひ、孤高で硬派な真っ黒カメラの魅力を体験してみてほしい。日常に彩りが添えられるから。