“ダブルデッカー”ほど童心をくすぐる言葉も珍しい。2階建て構造になっている鉄道車両はそう呼ばれ、たくさん連なれば連なるほど編成のカッコ良さと美しさが増すと個人的にはされている。
高速で走る鉄道車両がこうしたアーキテクチャを備えていること自体がロマンであるが、それに誰でも乗ることができるというのは、もはや夢のような現実と言って差し支えない。
そんなダブルデッカー車両を、いわゆる普通鉄道で最初に走らせたのがご存じ近鉄である。「ビスタカー」は当時から続くブランドだ。
現行の「ビスタカー」は、1編成4両のうち中ほど2両がダブルデッカー車となっているが、これが2編成連なって走る特急列車が名張から大阪難波まで走っていることを最近知った。
ダブルデッカー車が実に4両も。往年の「グランドひかり」を彷彿とさせる。
しかし、この列車が走るのは平日限定で、名張発が17:43であることを踏まえると、撮影できるのは日の長い時期に限られる。そして、そのチャンスが今日到来した。
今日は1日がかりの用事をこなすために休みを取っていたが、午後のスケジュールが大きく前倒しになったため、14時ごろにはもう身体が空いていた。空は青い。ということで、ひっそりと胸に秘めていた先述の計画を実行に移すことにした。
明るく元気の良過ぎる夏の光線を浴びながら向かったのは、近鉄大阪線の赤目口である。「而今」の蔵元がある名張市にある駅で、自宅の最寄駅から電車を乗り継ぐこと約2時間の道のりだった。
駅から15分ほど歩いて目をつけておいたポイントに到着。2名の先客と軽く挨拶を交わした後、前走りの列車でイメージを膨らませながらその時を待った。