この時に見た夕陽があまりにも美しかったので、近く晴天に恵まれたならば、湖北の田園地帯を駆ける列車をシルエットで撮ろうと考えていた。
降り立ったのは坂田駅。車窓から目星をつけていた辺りを散策すると、収穫間近の大豆を湛えた畑の広がる場所を見つけた。これがちょうど線路の東側にあった。乾いた大豆の枝葉が夕陽の逆光に輝く姿も気に入ったので、ここで構えることにした。
滋賀県は空が広い。日本一の大きさを誇る湖と、その恩恵を目一杯に受けて耕されてきた無数の田畑が織りなす広大な風景はとても美しい。
その昔、九州から離れて暮らすことなど考えてもみなかったが、今、縁あってこの豊かな土地で日常を送る機会が得られたことをただ嬉しく思う。