プッシュプルスタイルの列車はそう見られるものではない。
機関車を動力とする“動力集中方式”の列車の場合、機関車が先頭に立ち、それに牽引される客車や貨車は動力や列車を運転する装置を持たないのが一般的だ。しかし、列車の折り返し地点に機関車を付け替える設備が整っていない場合等においては、あらかじめ、その列車の最後部に列車を運転する装置を備えた車両を連結しておく工夫が必要だ。
その車両には別の機関車を充てがうのが最もシンプルな方法で、例えば欧州のTGVやICEといった高速鉄道が実例として挙げられる。しかし、重たい機関車の両数を増やすと路盤にかかる負荷が大きくなるので、規格の低いローカル線ではこれを避けたい。おそらくそういう理由で、木次線を走る「奥出雲おろち号」などは、客車に運転台を設けてそこから機関車を制御するというウルトラCを講じたものと推察される。
そんな珍しいプッシュプルの列車が近所を走るというので、仕事を中断して散歩がてら出かけてきた。現地に着いてみると、平日の日中とは思えないほどの人出。
皆さん一体何を生業としておられるのだろうか・・・などと、自分のことをすっかり棚に上げて物思いに耽っていると、目的の列車がやって来た。