若手おいさんの日記

よく食べ、よく飲み、マイペースで生きましょう。

210319_伯備線の特急「やくも」

 

f:id:oitanshi:20210319224341j:plain

PENTAX KP + smc PENTAX-A ZOOM 70-210mm F4

F5.6 1/800 ISO-125

 伯備線を訪れた最大の目的はEF64形の牽く貨物列車ではあったものの、185系が「踊り子」の定期運用を失った今、陰陽連絡特急である「やくも」こそが、国鉄型車両が担う日本最後の定期特急列車になってしまった。この姿を、一度はきちんと写真に収めてみたいとも思っていた。

 「やくも」で使用される381系は“振り子機構”を備えており、カーブに差し掛かると、それを周の一部とする円の中心方向に向けて車体を傾けることで、一般的な車両よりも高い速度で曲線を駆け抜けることができる。

 振り子機構を備えた車両は他会社でも散見されるが、線形に追従してパッシブに車体を傾ける“自然振り子式”を採用しているのは、381系が唯一である。その他、例えば私の地元を走る特急「ソニック」で活躍する883系885系などが採用する“制御振り子式”の方が一般的である。この場合、車両に予めインプットされた線形情報と現在の走行位置を照合し、カーブに進入する少し前から徐々に車体を傾け、カーブを抜ける少し前から徐々に車体を真っ直ぐに戻していく工夫がコンピュータによってなされている。

 一方、381系が採用する自然振り子式の場合はこの工夫が無いため、まるで波の高い日の船に乗ったときのような感覚、つまりは船酔いと同じ感覚に陥ってしまう人も多いと聞く。

 JR西日本の中期経営計画で「やくも」の輸送品質向上が謳われており、2023年度までに新型車両に置き換えられる可能性が高い。しかし周知の通り、同社はCOVID-19の影響で厳しい経営状況にああることから、計画の見直しも十分に考えられるものの、約40年という381系の車齢を考えれば、楽観視はできない。

 かつては増結も盛んに行われていた「やくも」だが、需要の低迷する今に限っては4両編成の小ぢんまりした編成が基本のようだ。こうして撮影していると、10年前の日豊本線485系の「にちりん」を撮影していた時のことを思い出すが、少し違った印象を抱くのは、381系の構体がアルミ合金製だったり、その構造が485系に比べてスリムになっていたりするためだろう。

 ハイスピードが売りの振り子車両らしく、ピッチの速い重厚なジョイント音を轟かせながら軽やかに走り抜けて行った。