今日は朝からずっと自宅で仕事をしていて、ようやく一段落して外に出たのは夜9時をとうに回った頃だった。夕食もまだだったが、それほどお腹も空いていないし、何か食べたいというよりも外に出たい気分だった。
昨日から続いている爽やかな晴れ間も今日までだとNHKから聞かされていたし、玄関の扉を開けてみると、およそ6月下旬梅雨時のそれとは思えないほどさっぱりとした空気に触れ、すっかり夜なのにまるで朝が来たみたいな爽快感を覚えた。
そういうわけですっかり気分も高まり、久しぶりに三脚でも持ち出して大げさな撮影をしてみようかという気分になった。実は前から目をつけていた場所があって、今夜はそこを訪れてみた。
オレンジ色の街灯の向こうに大きめの踏切を望む。たった2両編成の電車には贅沢にも思えるが、短くとも一丁前の鉄道であることの威厳を感じる。この場所の暗さと暖かみの調和は、かつて学生時分に訪れた、馬車道あたりの雰囲気に通ずるものがあった。
人の少ない夜に撮影するのも楽しいということを覚えた、三十路前の涼夜であった。